女性ファッション雑誌の後ろの方にありそうなSS的なネタ

あ、ども。
なんかリアル友人との会話があまりにいつもネタ満載なので、SSっぽく書いたらすっきりした。
あれだ、バブルを知ってたりする年代のファッション雑誌に載ってそうなアラフォー小咄。


女達の会話









「ね、エステとかいったことある?」
ショートケーキの苺を頬張りながら、絵美がずいっと聞いてくる。
直子はブラックのコーヒーの沈んだ色を見つめながら、用心深く答える。
「んー、若い頃は行ったかな。」
嘘ではない。結婚前にちょっとワキの脱毛に行ったのと、化粧品買ったおまけでしてもらったのと、ぐらいだが。
「エステとか、補正下着とか、随分体型変わるみたいだよお。」
「あ、私、補正下着はやらない。自前の筋肉鍛えるって決めたから。」
「へえ。まだ筋トレいってんの?」
「うん。長い事ウエストニッパーで細く見せてたら、腹筋弱って自分でまっすぐ立てなくなったから、ちゃんと鍛えようと思ってね。それに、そういう補正下着って、展示会連れて行かれた事あるけど、何十万のローン組まされるんでしょう」
そっか、と絵美は納得したように
「ああ、それを大事に10年以上着るのもみっともないかもねえ」
「そうそう、そんなのだったら、高級な下着ひとつ買うほうが楽しいよ」
「分かる~私もそっちの方がいいや」
直子は微笑みながら、私がここ数年ユミクロのブラトップしか付けてないって知ったら、絵美はなんて言うだろうなと考える。
直子だってバブル時代は、色々買った。ハヤシマリコの小説に出てくる女主人公のように、ラペルラとかオーヴァドゥとか、今でも高級下着のブランド名はすらすら出てくる。雑誌に出てくる下着専門店にも行った。しかし、そんな自己投資した体型は、妊娠と出産で一変した。華やかで繊細なレースなんかより、猫印やワコーレの国産ブラのほうがよっぽど役に立ったのだ。ついでに言えば、髪振り乱して子育て中にそんなランジェリーを楽しむ余裕なんて、ない。
まあそんなもんだよなあ、もう子育ては終わりだけど、とぼんやり直子はコーヒーを啜る。
絵美の話題は、最近東京で買って来たとあるブランドのメガネへと移っていた。
そのメガネブランドにまったく疎い直子は、ふーん、そう、と当たり障りのない相づちを打ったのだが、絵美は褒めてくれない事に少々不満だったらしい。
「じゃ、直子はどこでメガネ買うの?」
「えーと。」嫌だなあ、と思いながら直子は渋々答える。「メガネのニキ・・・」
ぶっと絵美が笑った。あ、またか・・・と直子は落胆しつつ、一応抵抗してみる。
「ニキだって、ブランドも置いてるし買った事もあるよ。」
「あーのね、ライセンス販売と本物は違うの!」
絵美は勝ち誇ったように言う。「かけ心地、全然違うんだから」
「へえ・・・・」うーん、ワタシャ幼稚園からメガネかけてるんだけどなあ・・・別に困ってない、と直子は心の中で呟く。
「似合えばそれでいいんじゃない?私はどこの店でも、あ、それ、いい!一目惚れ、と思ったらそのメガネ買うよ?」
「そんな買い方出来るのは直子が稼いでるからでしょ。私は大事なお金だから、吟味して吟味して一番!を買うの。」
「ああ。それならどっちもありじゃない。どっちの考え方もアリだと思うよ。」
どうにか、自分もキズつかずに丸くおさめられたかしら、と直子はホッとする。コーヒーはすっかりぬるくなっていた。
絵美ってまだギラギラしてるよなあ、と直子は思う。自分が少し枯れて来ている気がするので、このランチの時間が直子は初めの頃苦手だった。
どっか美味しいところ行こう、と初めの頃はお互いに店を紹介していたのだが、直子が自分の徒歩圏内の店しか言わないので、この頃は絵美が勝手にお膳立てしてくる。直子がほぼ徒歩圏内ですべて・・・食料、日用品、美容院、病院まですませていると聞く度に、絵美はああもう、すぐ近場で間に合わせて・・・とあきれるのだ。あそこに東京帰りの腕のいい美容師さんがいるよ、とか、色々教えてくれるのだが、直子は、うん・・・別に間に合ってるし・・と済ませてしまう。
一度,車で30分かけて、産直野菜の市場へ連れて行ってもらったことがあった。ね、安くて新鮮でしょ、と言われ、ホントだね、すごいね、と答えたものの、直子は近所の八百屋のにいちゃんの「今日のおすすめ」とかおまけでいれてくれたりするキュウリの古漬けやなんかのやりとりが楽しかったりするので、相変わらず近所で済ませている。
「ホントはさあ・・・・」ぽつりと絵美が呟く。
「私、メガネは老けるから嫌なのよねえ」
あ、それなら、私にもアドバイスできるか、と直子は意気込んで言ってみる。
「だーいじょうぶ。メガネって、目立つからシミもシワも隠せるよ、結構便利だよ。あ、でも、その分ちゃんと口紅とチークはひいた方がいいよ。最近私コンビニのチーク使ってるけど、コンパクトでかさばらないし結構優秀だし・・・」
しまった、と思った時にはもう遅かった。
「直子、コンビニのなんか使っちゃダメ。安っぽい女になるよって雑誌でカンダウノちゃんが言ってたよ」
あーやっちゃった,地雷だあ・・・と、直子は絵美を見る。そういえば、絵美ってチークも付けてないしリップも薄いなあ・・・昔流行ったナチュラルメイクだあ・・・・これじゃあ老けて見えるよ・・・。
「いやまあ、そんな怒らんでも。研修旅行行く時とか大きいと邪魔でしょ。小さいの助かるんだから。」
「それでもコンビニはダメ。」
「・・・じゃあ、メイクしないのとコンビニコスメの2択だったらどっち選ぶのよ?」
「それなら私はメイクしない。」
かたくなだなあ・・・・もう十分分かってるけど、と、溜め息つきつつ、直子は少し譲ってみる。
「あのさ、一応ね、私もちゃんとブランドコスメ使った事あるよ。ゲラソのメテオリットとか(母にタダで貰ったとは言わない)、持ち歩くにはずっしり重すぎるけど、キレイだし持ってるだけで幸せになれるよね。」
「そう、その幸せ感が大事なのよ、直子」
「うん、でね。私は別にコンビニコスメでも幸せなのよ。安い女になるつもりはないけどね。」
わっかんないなあ・・・・・と絵美。見事に意見合わないねえ・・と今日何度か飲み込んだセリフを直子は今度も言おうかどうしようか迷って、絵美の目に不満そうな色をみてとる。
ふと直子は思った。
あ、そっか。
今、なんか楽しいや。
自分はやっぱり彼女が苦手だけれど。自分は今のささやかな日常がとても好きなんだと、再確認する作業も悪くない。
悪いけど、絵美の自尊心を満足させる会話には乗ってあげない。
(ま、そう割り切って会話するんなら結構面白いかな。)
直子はとっくに空になっていたコーヒーカップをテーブルに置くと、初めて自分の方から「じゃ、また来月ね」と言った。



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

雪うさぎ

Author:雪うさぎ
雪うさぎ:男の子2人の母ちゃん。ちばあきお、キャプテン、プレイボール大好き。
息子:兄ちゃん・俺様。浪人終了、春から大学生です。
   弟(ちび)・いじられ体質。春から高校生。

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
ブログ内検索
RSSフィード
リンク